お前が嫌い

極めてパーソナル

緑色の草原と水色の空


僕は彼女のそばに立っていた。
地面を認識することはなく、とはいえ、視界の下の方に緑色の健康的な草原を予感していた。

僕らは同じ方向に向かって立っていた。
多分、手を繋いだりだとか、そういった事もなく、ただ立っていた。
しかし、繋がっていた。形容しようもないが、僕は、彼女と、何かしらで繋がっているのを感じていた。

僕らはそこで何をしていた?
前方斜め45°上の方向、水色の空の一点を眺めていた。
或いは、注視していた。恐らくは、彼女も同様に。

すると、僕らの注視していた、まさしくその一点から、真っ白な光が、空を破るようにして、刺々しく現れた。太陽のそれではない事は、当然知っていた。
その光は、僕の目を痛めることなく、ただ白色のみを届けた。
そして、その攻撃性が僕の目を脅かすよりも前に、僕らのいた空間は、その真っ白な光で覆い尽くされた。

思えばこのとき、彼女は目に見えなくなっていた。
まだ側に居るのかは分からなかったが、得体のしれない繋がりだけは、残っているかどうかはともかく、消えてはいなかった。
そして僕は気付いた。彼女は今、純白のドレスを身に纏って、また、白い肌で、きっと、白い光の中に同化してしまっているのだと。

気付けば、僕らは教会にいた。真っ白な内装であるようにも思えたし、赤色や茶色や黒が、ちょうど自然に配されているようにも思えた。
僕らの前方、斜め45°上の方向には、考えてみれば似つかわしくない、両開きの木製の小窓が、白いレースのカーテンをたなびかせながら、パカリと開いていた。
緑色の草原と水色の空が、小さな窓枠の向こうに見えていた。

僕は、結婚するんだ、と思った。
すると、僕は、白の内装に茶色の長椅子、赤のカーペット、そして、黒い礼服を着た人々が幸福の中に座って、僕らを祝福していることに気が付いた。

僕はといえば、ずっと晴れやかで、爽やかな心地だった。空っぽでもあったが、例えば空虚などではなく、ただ単純に気持ちの良いものだった。

僕は、人々についてより認識を明らかにしようとしたが、顔はよく分からなかった。
となりの女性の顔も、思えば隠れて見えなかった。
結婚式なのに、僕の両親は見当たらなかった。
彼女の両親は、居るような、居ないような。

いつの間にか、僕と女性の立ち位置が左右逆転していることに気が付いた。
気が付けば、あの繋がりも、感じられなくなっていた。

そうして、じっとそのまま、僕はそこに立っていた。
隣を見るたびに老いていく女性に僕は何かを感じる事もなく、ただそこに立っていた。







小窓の向こうは、あいかわらずだった。
僕はただ、作り物めいた、
健康的な緑色の草原と水色の空を眺めていた。
すると、ふと、その向こうに彼女の気配がした。
僕はゾッとした。何に?
たぶん、隣の女性に。












帰れるだろうか? 向こう側に。










そう思いながらも、僕はやはり、前方斜め45°上の方向に小窓を見つめて、そのままだった。

伸ばした自分の手を視認して、気付いてしまった。
だからもう、試みることすら、躊躇われた。




小窓と、その向こうに、僕は永遠を見ていた。